「Deep Skill」を読んでみた

仕事を遂行するためには、組織の人々を味方につけ、組織自体を動かすことができなければならない。人と組織を巧みに動かす実行力が「Deep Skill」というもので、これは自分にとって圧倒的に欠落している力であり、ぜひとも身に着けたいスキルと思い、読んでみた。

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まず仕事を成功させるためにどうすべきかという目的合理性に徹し、したたかさを磨くこと。自分の感情は横において、組織の人々の心理を成就に利用するということ。はしごを外されたり、スケープゴートにされたりは当たり前のことで、道徳観には期待せず、例えば自負心を抑え、上役を立てるかのような言動が、当事者として逃げられないようにするような打ち手を考えることが必要。本には自らがスポットライトを浴びる”俳優”になるのではなく、自らは舞台に上がらず筋書きをコントロールする”脚本家”のポジションを取らなければならないとある。

また、正論とは危険なものであることから、正論はわきに置いて、まずは現実を直視するところから始めること。例えば意思決定することが上司の本質的な職務であるという正論を持ち出すのではなく、意思決定したくない存在かあるいはその何かがあるという現実を見極める。

思考という点では、自分一人で考えるだけではなく、”壁打ち”により他者の脳を借りたとき、新たな視点が見つかり、思考が広がったり深まったりする。つまりプライドは捨てて、誰かと話すことが最強の考える技術である。

話すときも知識や理論で相手をねじ伏せるのではなく、観察力を磨くことで、相手が話したいことを引き出すような話し方に徹する。健全な自尊感情の持ち主であれば、自分の力で解決策を見つけて困難を乗り越えたいと思っている。そこに助けようと思い、アドバイスをしてしまうと親切の押し売りとなり嫌われる。上手に他者貢献するには壁打ち相手を意識し、論理的に聞くこと。相手が頭の中で考えていることを言葉にして、それを相手が理解しやすいように整理して伝える能力が必要。

優れた企画とは、理路整然とした事業アイデアをまとめ上げることではなく、自分の目的を達成するまでの実行プロセスの設計図を画き出す、つまり企てを描くことを企画という。組織等の風向きをとらえ、風に逆らうのではなく、風を利用すること。

本当に仕事のできる人は、権力を手に入れたときこそ、反論することが難しい人の気持ちを察し、彼らの声に謙虚に耳を傾け、丁寧に合意形成を図ることができる。組織間の調整は、互いに譲歩することでまとめるのではなく、相手の利益・関心を引き出して共通の利害を探り当てることこそ重要。

好き嫌いの感情をコントロールするには、人間の悲しさを理解すること。保身に走ったりマウントしてきたりする人は、そうせざるを得ない人間としての悲しさがあり、自分も人である以上そういった悲しさや弱さが存在している。人間は簡単には変わらないので、それを許容せざるを得ない。

自分は根がまじめな分、正論を振りかざしたり、不誠実な人間を許せなかったりするのだが、仕事の上では人間心理、組織力学に注視して、もう少ししたたかに行動するのが今後重要だと感じた。